お墓を建てる

日本のお墓の代表的な考え方は、お墓を建てることです。お墓を建てる選択をする場合は、生前に自分のお墓を用意しておくと、残された家族の負担を軽減することができます。また、大きさやデザイン、墓地の場所などについても自分の希望通りにできるので、心残りがありません。ただし、お墓はいろいろな面で費用が必要です。お墓を建てる際の費用について、一通り把握しておきましょう。
お墓の購入費用
墓地代
墓地代とは、お墓を建てる土地にかかる費用のことです。ただし「墓地の土地を買う」のではなく、「永代に渡って使用する権利を買う」ことに注意してください。墓地を誰かに売ることはできませんし、もしも不要となった際には管理者に返還することになります。
墓石代
墓石の費用です。一般的には、墓石代の中に彫刻代、据付工事代、付属品などが含まれています。墓地によっては生前にお墓を建てることが難しい場合があるので、購入前に確認しておきましょう。
墓地管理料
墓地管理料とは、墓地や霊園の維持・管理のために、毎年支払う料金のことです。水道光熱費、ごみの処分費用、人件費などに使われています。墓地の区画の広さによって料金が変わる場合があります。
永代供養料
家族と墓地とが、遠く離れており、定期的なお墓参りが難しいケースが増えています。その状況を解決する方法として永代供養が人気です。永代供養は、家族の代わりに寺院や霊園が永代に渡ってお墓を管理・供養してくれます。注意が必要なのは、ある程度の年月が過ぎると、墓石を撤去して合祀などにされる場合が多いことです。
納骨堂

納骨堂とは、骨壺を収蔵する納骨スペースをたくさん備えた建物のことです。骨壺をお墓の中に納めるのではなく納骨堂に納め、家族は納骨堂でお参りします。昔の納骨堂は簡素なものが多かったかもしれませんが、近年の納骨堂は個室を完備したり、仏壇型であったりなど現代的に進化しており、お墓参りの負担軽減のために、納骨堂を選ぶ方は増えています。
納骨堂を選ぶメリット
管理の手間がかからない
納骨堂は屋内の施設のため、草むしりや掃除の必要がありません。いつも清潔な空間が保たれるため、家族は安心です。
お参りしやすい場所を選べる
納骨堂を選ぶなら墓地の場所に縛られません。例えば、遠くの家族からもアクセスのいい場所を選ぶことで、お参りしやすくなります。
承継者を考えなくていい
お墓を建てると、子どもの代、孫の代と次々に承継者が必要になります。承継者のことを考えなくていいい納骨堂は、少子高齢化が進み、生き方が多様化する現代のライフスタイルに向いています。
納骨堂のタイプ
ロッカー型
ロッカー型の納骨堂は、昔からあるスタイルです。費用が抑えられるのがメリットですが、個別の供養ができない場合があるのでご注意ください。
仏壇型
仏壇と共に位牌を置ける納骨堂です。その家の納骨檀として、お備えをして個別に手を合わせることができます。
自動搬送型
骨壺がバックヤードに保管されており、お参りする際に、参拝ブースまで自動搬送される納骨堂です。主に土地不足になりがちな都市部で普及しています。
合祀墓

合祀墓とは、大きなお墓の下で複数の遺骨を一緒に埋葬するお墓のことです。共同墓地と呼ばれることもあります。家族だけのお墓にはなりませんが、管理や供養を墓地管理者に任せられること、お墓の継承の心配がないこと、金銭面の負担が少ないことなどのメリットがあります。樹木の根元に遺骨を埋葬する「樹木葬」も、合祀墓のひとつです。近年は、少子高齢化や核家族化の影響で、お墓を守れない、お墓を継ぐ人がいないなどの問題を抱える人が増えています。お墓を建てても維持・管理できないのであれば、合祀墓は選択肢のひとつになります。 。
合祀墓の種類
慰霊碑型
石碑や仏像・仏塔などのモニュメントを建てて故人を追悼します。災害や戦争、大きな事故などで亡くなった方の霊を慰める目的で建てられることが多い合祀墓です。
立体型
地上と地下に納骨スペースがある立体的な合祀墓です。まずは地上の納骨スペースに遺骨が安置されますが、一定期間を過ぎると地下の合祀スペースに移されて供養されます。
個別集合型
シンボルとなる墓石の周りに、個別に納骨できるスペースが設けられている合祀墓です。この場合も一定期間が過ぎると、地下の合祀スペースに移されて供養されます。
樹木葬
遺骨を樹木の下に埋葬する樹木葬も、合祀になる場合があります。樹木葬には明確なルールがなく、様々な種類があります。納骨スペースに遺骨を埋葬するのか、それとも遺骨を直接埋葬して土に還っていくのかなど、希望に合わせた樹木葬を選びましょう。
合祀墓を選ぶ際の注意点
一度合祀を選ぶと、あとから遺骨を分けることはできません。本人が希望したとしても、他の方と一緒に埋葬されることに抵抗がある方もいらっしゃいます。親族間でトラブルにならないように、事前に話し合っておきましょう。
樹木葬

樹木葬とは、墓石の代わりに樹木や草花を墓標とするお墓のことです。自然と共生していく前向きなイメージで、多くの場合に永代供養の仕組みが採用されています。お墓の継承者が必要なく、維持管理を任せられること、宗旨宗派を問わないことなどから人気が高まっています。ただし、樹木葬には明確なルールがなく、様々なスタイルがあることに注意してください。自然葬にするのか、骨壺を納骨するのか。合祀するのか、個別区画で埋葬するのかなど、しっかり確認して、ご自身や家族が納得できる樹木葬を選びましょう。
樹木葬のおおまかなスタイル
里山型
里山にある樹木を墓標の代わりにして、その周辺に遺骨を直接もしくは土地に還元される骨袋等に納めた状態で埋葬します。いわゆる自然葬のひとつです。土に還っていくイメージが強く、自然派の人に向いています。そもそも樹木葬は、このスタイルから始まったと言われています。
公園型
霊園墓地の中にシンボルツリーとなる樹木を植えて墓標の代わりにしているスタイルです。1本の木につき一人の遺骨を納める個別型、1本の木の周りに複数の納骨スペースを設けている集合型、何人かの遺骨を一緒にして埋葬する合祀型など、複数の選択肢があります。
ガーデニング型
草花が咲き誇るイングリッシュガーデンのような空間を墓地とするのがカーデニング型の樹木葬です。樹木を墓標とするのではなく、個別に墓標を設けて、そのまわりを花々で彩っています。従来の墓地が持つ無機質な雰囲気がなく、空間全体が華やかで明るいことが特長で、人気が高まっています。
散骨および手元供養

定まった墓地に埋葬されるのではなく、海や空、宇宙など、故人の思い入れがある場所で遺骨をまくのが散骨です。自然と一体となりたい、自然に還りたいという故人の気持ちを優先して散骨を選ぶ方が多いようです。散骨の場合、残された家族は海に手を合わしたり、空を見て手を合わしたりして供養することになります。それでは寂しいと感じる場合は、遺骨の一部を残して手元供養にすることができます。
散骨の種類
海洋散骨
海に遺骨をまく葬送方法です。海洋散骨はどこでもできるわけではなく、ある程度場所が限られます。海洋散骨は船から行われることが一般的ですが、ご家族が同行しての散骨が可能です(業者による)。なお、川や湖などでの散骨は原則できません。
山林散骨
山林での散骨は、散骨のために用意されている山(私有地)での散骨になります。風評被害を防止する観点で具体的な場所を公開していないことも多く、ご家族が同行しての散骨ができない場合があります。
宇宙散骨(宇宙葬)
遺骨を宇宙に散骨することができます。宇宙葬には、故人の生前の夢を叶えるなどのロマンがあります。ロケットに搭載したカプセルを月面まで運ぶものから、バルーンを飛ばして成層圏まで運ぶものまでいくつかの種類があり、費用も大きく異なってきます。
手元供養とは
手元供養とは、遺骨の一部を身近な場所で保管して供養する方法のことです。大きな仏壇を置く必要がなく、マンションやアパートでも保管場所に困らないことが利点です。骨壺をそのまま置くケースもありますが、ぬいぐるみや花器などのインテリアに収めて部屋に飾ったり、アクセサリーにして常に身に付けておくこともできます。
墓じまい

代々引き継がれてきたお墓を守っていくことは、どうしても負担になります。その負担を子どもや孫の世代に引き継がせたくないという思いから、「墓じまい」をする方も増えています。墓じまいとは、お墓を撤去して遺骨を合祀墓など別の場所に移すことです。お墓を管理している寺院や霊園の了承のもとに行うことが必要で、お墓から取り出した遺骨を合祀墓に納骨することが条件になる場合もあります。お墓の撤去費用と納骨の費用をあわせると高額になるので、事前に詳しく聞いておきましょう。また先祖の墓となると、親族の同意も欠かせません。分家などで継承するならそれも選択肢となりますので、あらかじめ相談して、親族も納得の上で進めましょう。
墓じまいの主な理由
・維持・管理が負担になる
・継承者がいない
墓じまいの注意点
・寺院や霊園の了承をもらう
・親族の同意をもらう
・費用の負担を考えておく